焦点/仙台・災害危険区域外の移転/「組合型」に住民困惑 災害危険区域の指定から外れた仙台市の津波被災地で、移転を諦めきれない住民が不満を強めている。集団移転事業の対象とならないため、市は組合施行型の土地区画整理事業など、住民が主体となって移転する手法を提案するが、手続きが煩雑な上、費用面の負担も大きい。住民は現実的な移転支援策を求めている。(亀山貴裕)
◎手続き煩雑、多額の費用/「非現実的」と訴え
<独自に利子補給>
津波で13人が犠牲となった若林区三本塚地区(約100世帯)。集団移転の対象区域から外れたが、昨年末から住民の1~2割が非浸水域の地区内に移転を求めてきた。
「移転を実現するには土地の確保や生活インフラの整備が必要。ただし仙台市が事業主体となることはできない」。7月12日、六郷市民センターで開かれた会合で市の担当者が説明した。
市は集団移転対象から漏れた住民への独自支援として、土地・建物の購入費用の利子補給などを提示。個別に移転する住民も出てきている。
だが、コミュニティーを維持しながら移住するための本格的な支援はない。危険区域内の集団移転などに人や財源が取られ、余力がないのが理由の一つだ。
<用地交渉も自ら>
地域のまとまりを保って移転する方法として、市は住民が組合を設立して行う区画整理や共同での開発行為を提案。移転先となる農地を住民が購入するか、または自分たちが所有する農地と交換するなどして取得し、宅地造成する方法だ。
ただ、組合施行型の区画整理の場合、行政施行の事業と異なり造成のための費用は原則として全額が組合負担。用地取得のための地権者との調整も住民が行う必要がある。開発行為にしても費用負担は大きく、煩雑な手続きが要る。
初めて耳にする複雑な手法に住民は「土地の確保や造成を行うのにそんな手間暇がかかるのか。被災したのに宅地造成まで行う余裕がどこにあるのか」と口をそろえた。
昨年秋に1度は災害危険区域となる見通しを示され、その後に外れた若林区井土地区(約100世帯)では大半の住民が移転を希望してきた。6月以降、三本塚と同様の手法を市から提示されているが、住民からは戸惑いの声が上がる。
「井土地区移転問題を考える会」の事務局、三浦聡一さん(52)は「支援の枠組みの説明もないのにできるはずがない」と市の姿勢に疑問を抱く。「移転のための現実的な手法を考えてもらわないと何も進まない」と訴える。
<「判断材料提示」>
市は危険区域外はかさ上げ道路の整備で津波の浸水深が下がるため、土地の買い取りなど、強制的に移転を強いられる住民並みの支援を行うのは困難との認識を示す。
市区画整理課の近藤正範課長は「津波に恐怖心を抱く住民の気持ちは分かる」とした上で、「9月末には被災家屋の解体撤去期限が切れてしまう。それまでに、何らかの支援ができるかどうか、住民の判断材料をそろえたい」と話している。
2012年08月13日月曜日
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1071/20120813_01.htm200世帯、自力移転計画 仙台の危険区域外被災者 東日本大震災で津波被害を受けた仙台市の災害危険区域外の被災者のうち、約200世帯が自力での移転を計画していることが21日、分かった。市の独自支援制度の対象となる危険区域外の津波被災者は約2300世帯で、市は今後も移転希望者が増えるとみている。
市によると、防災集団移転促進事業の対象とならない浸水区域の被災者向けに創設した独自支援策のうち、移転先での住宅再建ローンの利子相当額を助成する制度の適用を、約80世帯が18日までに申請した。
ほかに、宮城野区の南蒲生、新浜地区や若林区の井土、三本塚、種次中野地区などの計約120世帯が集落ごとの移転を計画したり、個別移転を望んだりしている。
市内では集団移転先の宅地造成が進むなど、復興事業が具体化していることから、市は危険区域外でも自力での移転希望者が増加する可能性があると想定している。
市は昨年6月、住宅再建ローンの利子補給や引っ越し費用など防災集団移転促進事業と同様の支援制度の運用を開始。昨年末までに、2億5900万円の交付を決めた。
国は今月、危険区域外での住宅再建支援策を実施する方針を打ち出したが、市は支援金の増額や対象者の拡大はせず、基本的に現行制度の財源に充てる方針。
2013年01月22日火曜日
河北新報
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