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心身の不調、就労阻む/家計のひずみ(3)/かすむ復興


マッサージ施術のボランティア予定表を見ながら「感謝されるのはうれしい」と語る片山さん。本業では苦闘が続く
<勤務先に津波>
 深夜勤務をこなしても、預貯金の残高は3万~4万円を行ったり来たり。不安定なのは分かっていても、どうにもできない。
 登米市の片山浩介さん(65)=仮名=が、運転代行のアルバイトに就いて10カ月になる。年金を合わせた月収は10万円ほど。それも車の2種免許取得などのローンに消えていく。独身とはいえ、暮らしに余裕はない。
 東日本大震災が起きるまでは宮城県南三陸町に住んでいた。勤務先だった実兄の菓子店が津波で流され、移住と転職を余儀なくされた。
 震災直後から体調不良が続いている。不慣れな土地とあって、道順が頭に入らない。同僚にも迷惑を掛けっ放しだ。「代行業は合っていないんだよね」。思わず愚痴がこぼれる。
 将来の独立に備え、昨年10月には足もみマッサージの資格を取得した。「体が動く限り続けたい」。片山さんは勤務の合間にボランティアの施術で経験を重ねるが、開業資金確保のめどは今もついてはいない。

<母の死 深い傷>
 事業所の流出や廃業に伴い、職を失った住民は少なくない。復興需要を背景に高い有効求人倍率が続くとはいえ、全ての被災者がスムーズに再出発できるとは限らない。
 被災者の訪問支援を続ける団体「塩釜市民ボランティア希望」の会沢純一郎代表(68)は「問題は能力、意欲の有無だけではない」と指摘する。
 支援先の一つとなっている宮城県沿岸部の20代後半の女性は、今も定職に就けていない。自宅アパートにこもりがちの日々が続いている。
 きっかけは母親の死だった。避難生活のストレスで心を病み、ことしに入って命を絶った。仕事を辞めてまで母親に寄り添ってきただけに、女性の精神的ダメージが大きかったとみられる。
 会沢代表は「社会復帰には時間がかかる。すぐに就業させるのではなく、まずはボランティア活動に誘うことから始めたい」と話す。

<万策尽き廃業>
 震災は多くの人々の暮らしを破壊し、人生設計を狂わせた。影響を受けたのは、片山さんのような労働者だけにはとどまらない。
 ことし1月、宮城県内のある種苗業者が廃業に追い込まれた。沿岸部で営農再開を断念する農家が相次ぎ、ついに万策が尽きた。
 債務整理に伴い、自宅兼店舗も他人の手に渡る見通しになった。心労を抱えた経営者の男性は今夏、脳の疾患で倒れた。
 60代。ゼロからの再出発。「参った。参ったなあ」。入院先の天井を見上げ、男性はうめくしかなかった。


2014年09月19日金曜日

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201409/20140919_13010.html

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