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「TPP論議を整理する」の第2回目です。

前回は、日本での議論の起こりについて確認しました。
それは、要するに突然参加するなんて聞いてないよ、という話で、
そこには、社会に大きな影響を与える決まりごとを、主体的な分析・調査なく受け入れていいのかという問題がある、ということでした。

さて、今回はTPPの論議をこれから整理する前に、そもそもTPPの本文にはなんて書いてあるのかを確認したいと思います。

というのも、TPP=農業問題と捉えて農業の話ばかりしている人たちが、多いように感じるからです。特にマスコミに出てくる話題はこれが多いように思います。

なので、きちんと本文を確認しましょう、というわけです。

で、ネットで本文を探したところ、どうも本文の日本語訳がないらしい、ということがわかりました。

政府の文書(電子政府の総合窓口:http://www.e-gov.go.jp/ )を探しても見当たりません。
結局見つかったのは、あるブログで「私訳ですが」という形で一部訳されているものだけでした。
http://nihon-jyoho-bunseki.seesaa.net/article/183947550.html

もし、どなたか日本語の本文のありかを知っている方は教えてください。

で、しょうがないので英語で検索したら出てきました。
いくつかのサイトで本文が紹介されているようなのですが、ぼくが見つけた範囲で言うと、SICEというアメリカ地域(南北アメリカ大陸の国家及びカリブ諸国)の貿易関係の情報を集めたサイトとニュージーランド政府のサイトに本文がありました。
※SICE:http://www.sice.oas.org/default_e.asp
ニュージーランド政府の該当ページ:http://www.mfat.govt.nz/Trade-and-Economic-Relations/Trade-Relationships-and-Agreements/Trans-Pacific/0-sep-index.php

本文はPDFファイルなのですが、開いてみてびっくり。160ページもあります。
そりゃ国際協定だからそれくらいになるんでしょうね。
これ↓がニュージーランド政府のHPで公開されている本文。
http://www.mfat.govt.nz/downloads/trade-agreement/transpacific/main-agreement.pdf


これを見てぼくは初めて知ったのですが、環太平洋連携協定というのは直訳ではないのですね。
この文書には「TRANS-PACIFIC STRATEGIC ECONOMIC PARTNERSHIP AGREEMENT」とあります。

つまり、直訳すれば「環太平洋戦略的経済連携協定」なんですね。
でも、これウィキぺディアに載ってました
ウィキにだいぶいろいろ書かれてますね。

で、ここでやっぱりおかしいと思うのが、なぜ日本語訳を政府は公開しないのか、ということです。

だいたい政治家の何割が英語のこの本文を読めるのでしょうか?
あるいは政治家くらいには日本語訳が出回っているのでしょうか?
最低、英語の本文くらい載せればいいのにと思いますね。

でもって日本語で適当なものはないかと探してみると
石川 幸一亜細亜大学教授((財) 国際貿易投資研究所客員研究員)という人が、要点をまとめていました。
その文書はこちら↓
「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の概要と意義」PDFファイル


そこには次のように紹介されています。

「TPP は、2001 年1 月に発効したニュージーランド・シンガポールFTA(ANZSCEP)をベースとしている。ANZSCP は、「全ての品目の関税を撤廃する(第4 条)」自由化レベルの高いFTA である。同時に極めて包括的な協定であり、物品の貿易、サービス貿易、電子商取引、競争、税関手続き、投資、貿易の技術的障害と衛生植物検疫、政府調達、知的財産権などが規定されている。」(※太字は私の仕業)
 
注目すべきは、そもそもTPPはニュージーランドとシンガポールというまったくタイプの違う国の間で結ばれたものだったということでしょう。ニュージーランドは農業国でシンガポールは完全な貿易立国ですね。シンガポールには2度行きましたが、牧場なんて見当たりません。

それからもう一つ注目すべきは、自由化の対象が「物品の貿易、サービス貿易、電子商取引、競争、税関手続き、投資、貿易の技術的障害と衛生植物検疫、政府調達、知的財産権など」になっている点でしょう。

自由化の度合いが激しくかつその対象が非常に広い点こそが、小国ばかりが集まってできているTPPにアメリカが加わった本当の狙いなのでは。

アメリカ政府の文書(”Increasing U.S. Exports, Creating American Jobs: Engagement with the Trans-Pacific Partnership”)にはちゃんとアメリカの輸出とアメリカ国内の仕事を生み出すためにTPPに参加すると書かれてあります。しかし、TPP参加国はいずれも小さい国々。なぜそんなものにアメリカが入ったのか?

そもそもアメリカ政府は、TPP以前にTPP参加国でもあるオーストラリア、ペルー、チリ、シンガポールとはFTAを結んでいます。それをさらに発展させるということなのでしょうが、それにしてもアメリカのモノを売り込むには、どの国も人口規模が小さい。

アメリカの狙いはきっと農産物などの「モノ」の貿易ではなく、それ以外の面でアメリカがその国に入り込み、アメリカンスタンダードをつくってしまうことなのでしょう。投資や貿易、知的財産、政府調達などの分野でアメリカに有利なルールを作ってしまう。あるいはそういう面ではアメリカは他国を圧倒できるから、その力を使っていずれモノの輸出につなげていく、と。そんなふうにも見れますが、それにしたってあまり大したことではないような気がします。

キーポイントはアメリカがTPPへの参加を表明したタイミングと場所にある。
アメリカはどこでTPPへの参加を表明したか? 他でもない日本ですね。
出典:アメリカ政府文書

なんでわざわざ日本でTPP参加を表明したのか?
それはやっぱり”アメリカが参加するんだから日本も参加するよね?”というニュアンスを醸し出すためでしょう。

オバマが東京でTPP参加を表明すれば、頭の回転の速い日本の官僚たちは見事に空気を読み、これは日本も参加しなければ大変なことになる、というふうにアメリカは見込んでいたのではないでしょうか? どうせ日本のことだから数カ国+アメリカという協定を持ち出せば、それが世界の常識だっていうことになり、なにも考えずに入ってくると。TPPはFTAよりも過激だけど、参加国がいっぱいあるから世界の常識だ、空気を読めと言うだけで参加するだろうからFTAの交渉よりもらくちんだ、ってな感じで。

日本ではなぜかTPP=農業問題となっていますが、このような理解をしてくれるとアメリカとしては助かるのではないでしょうか。農業問題にしてくれれば、その一点だけで日本は参加の可否を決めてくれるから話が早くて助かるなぁ、って感じで。

いずれにしてもアメリカ政府のTPPのHPと日本政府(経済産業省)のそれとはまったく情報量が違いますね。アメリカ政府は、TPP参加国のいくつかの国とFTAを結んでいるので、そのぶんTPPの準備もしやすかったでしょう。しかし、それにしても日本のHP上の文書量だけで比べても、TPPについてはその参加の是非を検討するための準備すら不足しているように思いますね。その辺こそアメリカを見習うべきでしょう。




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