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除染下請け 天引き横行 業者支払い日給1000円
2013年1月11日 07時05分

 東京電力福島第一原発事故に伴う国直轄の除染事業で、下請け業者が、作業員の日給から半ば強制的に宿泊代や食事代を天引きし、国が支給する危険手当の一万円のほかは、一日千円程度しか支払っていない実態が、作業員らへの取材で分かった。宿泊施設は、業者が国などから無料や安価で借りたもので、作業員から徴収した宿泊代のほとんどが業者の取り分と化す形となっていた。 
 除染作業は放射性物質にさらされる危険があるため、国は作業員に一日一万円の危険手当を支払っている。ところが、この手当は除染を請け負う業者を通じて支払われており、そのことが不透明な給料支払いを生む温床になっていた。
 福島県田村市の除染現場の事例では、作業員の日給は、国が支払う危険手当の一万円に加え、福島県の最低賃金に近い約六千円を業者が日当として支払う二階建ての形を取っていた。
 見掛け上は、合わせて日給一万六千円となるが、宿泊代や食事代として四千五百~四千七百円を天引き。作業員が手にする額は一万千円強にまで目減りしてしまっていた。
 危険手当の財源は税金で、本来的には作業員に直接支払われるべき性質のお金。業者は事実上、一日わずか千円強で作業員を雇っていた形になる。
 業者のうまみになっているのが宿泊代や食事代。ある業者は、国から宿泊施設を無料で借りているのに、作業員に朝夕の食事込みで四千五百円で貸し付けていた。
 別の業者は、明細を示さず宿舎と食事付きで日当一万千円の条件で作業員を集めてきたが、危険手当が支給されることが作業員の間で広まり説明を求められると、危険手当を含む日給一万六千円から宿泊代三千七百円と食事代千円を差し引いたものだと説明した。
 このケースでは、作業員は一室四千円のバンガローに四、五人で宿泊。業者は宿泊費として計一万四千八百~一万八千五百円を集めており、四千円との差額が利ざやになっている。業者の関係者によると、食事も原価は三百円程度に抑えるようにしていたという。
 不透明な給料の実態のほか、雇用契約書を交わさず口約束だけの人も多かった。
 管轄する福島労働局の担当者は、こうした実態をある程度は把握し、改善指導もしているというが、田村市の現場以外でも同様の不透明な給料問題が起きていた。
 本紙の取材に対し、元請けゼネコンの広報室は「過去には危険手当がきちんと作業員にわたっていない例もあったが、きちんとわたるよう下請けへの指導を繰り返している。雇用条件などは法にのっとった契約になるよう個別に指導している」とコメント。下請け企業からは十日までに回答がなかった。
<危険手当> 環境省は福島事故に伴う除染で、国直轄の事業では被ばくの危険がある作業員に「特殊勤務手当」を支払っている。国家公務員が警戒区域に入るときの手当を目安に、1日1万円と決められた。一方、もっと危険性が高い福島第一原発で働く作業員に対しては、東京電力が放射線量など現場の状況に応じて危険手当を支払っているという。ただ、作業員には十分届いていないためか除染の危険手当の高さへの不満も出ている。
(東京新聞)

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