電力出身者を環境省大量採用「原発知識必要」 東京電力福島第1原発事故に伴う対応や原子力規制を担う環境省管轄の機関で、民間企業出身者採用枠として、同省が電力会社や関連企業から相次いで職員を受け入れている。原発関係の専門知識を持つ職員が必要になっていることが背景にある。事故対応に当たる規制官庁に、原子力推進企業の出身者が大量採用されることに疑問の声も上がっている。(菅谷仁)
<民間枠の3割>
国は2014年度、全国の地方環境事務所の職員として民間企業出身者122人を採用。約3割の34人が東電やその関連企業、関西電力などに勤めていた職員だった。このうち除染などを担う福島環境再生事務所(福島市)は、12人を将来的に元の会社に戻る「任期付き職員」として受け入れた。
各地方環境事務所の電力事業者の受け入れは13年度から続いている。同年度は民間企業出身者を80人採用し、少なくとも10人が電力関係だった。
環境省はことし2月、福島県双葉、大熊両町に除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設を着工した。地権者との用地交渉は難航。指定廃棄物の最終処分場関連の業務もあり、地方環境事務所に専門職員を確保する必要性が高まっていた。
福島環境再生事務所は「われわれの知見だけでは対応できないので、電力事業者に来てもらっている」と説明する。
<即戦力に期待>
全国の原子力施設を監督する原子力規制庁でも、12年に発足してから原発の検査業務が増している。
13~14年度で合計30人の民間企業出身者を受け入れた。うち約20人は使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)などに携わる日本原燃など原子力関連企業出身者を中途採用した。
同庁人事課の担当者は「一から育てるより即戦力になる。中途採用で元の会社には戻れず、出身企業に関わる仕事は担当させないため、利害は生じない」と強調する。
こうした状況に原子力資料情報室(東京)の伴英幸共同代表は「任期付き採用はもちろん、中途採用であっても出身企業の影響を完全には排除できない」と指摘。原子力行政に絡む国主催のシンポジウムでの「やらせ」発言など、電力事業者の利害が規制側に反映された過去を引き合いに「再び繰り返されることを危惧する」と訴える。
2015年04月16日木曜日
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