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同じ被災者なぜ支援に差? 気仙沼「危険区域」外の住民反発

宮城県気仙沼市が指定を目指す災害危険区域から、外れる見通しの住民の間で反発の声が出ている。住宅移転の各支援制度が区域内の住民を対象としており、格差が生じかねないからだ。公費助成を期待していた被災者は多く、予測外の線引きに困惑している。 「津波で自宅は跡形もなく流された。なぜ、ここが危険でないと言い切れるのか」。気仙沼市の事務職畠山幸子さん(55)は、市の対応に不満を募らせている。
 自宅があった松崎中瀬地区は、海から約500メートルの距離にある。津波で地区の住宅十数戸は全て流失。その後、集団移転の計画も持ち上がったが、持病を抱える夫(64)の健康を考え個別移転の道を選んだ。
 あてにしたのは、がけ地近接等危険住宅移転事業(がけ近)。危険区域内の住宅の移転や購入費に、最大786万円の利子補給が受けられると説明を受けていた。
 5月末になって、自宅周辺が危険区域から外れることが分かり、再建計画が狂い始めた。「何とかがけ近の対象に」。畠山さんは6月上旬にあった市の個別相談会で食い下がったが、線引き変更は難しいと言われた。
 畠山さん宅から海側に約100メートル離れた地区は区域内となり、国の補助が受けられる見込み。「自宅を流された同じ被災者で、なぜ支援に差が出るのだろう」と畠山さんは納得できずにいる。
 区域の範囲は、市が津波シミュレーションを基に決めた。堤防整備などを施した上で、昨年と同程度の津波が襲来した場合の浸水域を、危険区域に指定する。現在より高い堤防を整備するため、想定浸水域は昨年の浸水実態より小さくなる。
 市の説明会では、どの会場でも「がけ近の活用を前提に準備してきた。突然はしごを外された」「また津波で自宅が流されたら、市は補償してくれるのか」といった声が聞かれた。
 ただ、危険区域を広げれば別の課題が浮かぶ。区域内は住宅などの建築が制限されるため、有効利用できる平場の用地が少ない同市で規制の網を掛ければ掛けるほど、市街地開発が抑制される。
 市建設部の佐藤清孝参事は「際限なく危険区域を広げることはしたくない。区域から外れた人の移転については、市独自の支援ができないか検討している」と語る。
 危険区域を昨年12月に定めた仙台市は、計画公表から議決まで3カ月をかけ、住民と議論を重ねてきた。気仙沼市は計画公表が5月末で、採決まで1カ月程度しかない。
 宮城復興局の担当者は「気仙沼市の手続きは、区域指定が後手に回り、早期に移転した人が支援を受けられないなどの問題もある。指定をゼロベースで見直すことも必要ではないか」と話した。

[災害危険区域]地方自治体が津波や傾斜地の崩壊などにより危険の著しい区域を指定し、建築の制限などを行う地域。がけ地近接等危険住宅移転や防災集団移転などの補助事業の前提になる。気仙沼市は市議会6月定例会で条例を制定し、7月から「がけ近事業」の申請受け付けを目指す。

2012年06月18日月曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/06/20120618t11021.htm

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