寝台列車に乗ってイスタンブールからブルガリアのソフィアへ行こうと思い、イスタンブールの駅で事前にチケットも買いました。
が、その時からちょっと怪しい事態になりそうな予感はありました。なんせチケットを買う時に、寝台列車のコンパートメントは何人用か聞いてみたら返ってきた答えは、「ノー コンパートメント。シート オンリー」。
ブルガリア鉄道ホームページでも寝台列車と書いてたはずだが、コンパートメントがないとはどういうことなんだ?
列車は22時にイスタンブールの駅を出るというので、チェックアウトしたあとだけの宿に8時ごろまで行って歩いて20分ほどかけて鉄道駅に向かう。
外はもう暗いが、街灯もありまた観光客や人が歩いており駅までの道のりは割と安全だった。
駅に着いたはいいが、どこから電車がわかるわからないので、切符売場で聞こうとすると、事務所から看板を持ったおじさんが出てくる。
おじさんはすれ違いざまに、「ソフィア バス」と言って看板と待合室を指差す。そして「テン オクロック」と言って待合室で待つように、というような仕草をする。
待合室は住み込めば100人ぐらい入るような広いスペースだが、椅子が周囲にぐるりとあるだけでがらんとしている。
しかも入ってすぐ異臭がする。駅には猫が何匹もいるので、どうもそのしょんべんの臭いのよう。
待合室には既に欧米人のグループ四人ほどと地元の人らしいおじさん、おばさんが10人ほどベンチに座っていた。
待つこと40分ほど、バスが駅になってくる。40人ほどが乗れる大型のバス。前に行ってバスのメーカーを確認するとメルセデスベンツだった。
22時になる前にバスに乗りこむ出発を待つ。
バスは予定通りにイスタンブール駅を22時に出発。乗客はドイツの男女3人グループとフランス語をしゃべる人のカップル1組に同様にフランス語をしゃべる1人旅らしい若い男性、あとはぼくら日本人2人、トルコ人かブルガリア人のおばちゃん2人だけ。がらがらだ。
バスが発車すると暖房も聞いていたため寝てしまう。
最初に目が覚めたのは夜中の12時ごろ。サービスエリアでの休憩時間だった。トルコのサービスエリアは日本と同じ位充実していて遠目からも中でいろんなお店がやってるのが見える。
しかし眠気が強かったため外には出ずそのまま待つ。
次に目が覚めたのは夜中の1時20分過ぎ。駅に到着したよう。
バスからリュックを引きずりだし、待合室には入る。暖房あり。
ホームに出てみると電車はまだ来ていない。
しばらくホームで待っていたがなかなか来ないので待合室に入る。
おばちゃん2人は寝息を立てて眠り始める。おばちゃんたちがこうしてという事はまだまだ電車が来ないのだろう。
ぼくらもベンチに腰掛ける。ベンチは靴で踏まれたのか土っぽいものなどが乗っかっていたので、いらない紙で拭いてから座る。
待つこと30分ほど。2時過ぎくらいにパトカーがエンジン音を響かせながらホームに入ってきてキュッとUターンして止まる。ホームを車が走るなんて初めて見た。
そしたら間も無く汽車が入ってくる。電車ではない。ディーゼルで動いているようで車両はエンジン車一両に客車一両の合計2両。
イスタンブール駅のおばちゃんがコンパートメントはないと言っていたのが今わかった。
国際列車というのに、あまりの小ささにちょっと笑いが込み上げてくる。
荷物を担いでホームに出ると、汽車から降りてきたおばちゃんを警官がパスポートと英語で書かれた部屋に案内していた。
続いて僕らにも中へと合図するので、パスポートを取り出し出国審査を受ける。質問なし。スタンプのないページに押せばいいのち、コスタリカのスタンプの上から押される。所用時間1分ほど。
それから列車に乗り込む。向き合わせの席に陣取る。暖房が入ってなく、やや冷える。
出発を待つがなかなか発車しない。暖房もつかないので寝袋を出して温まっていると3人の警官?が「ポリススタンプ」と言ってやってきたのでパスポートを見せる。それからチケットもチェックされる。加えて荷物は何かというようなことを聞かれたので服などだということで、検査終了。
しかしそれでも出発する気配なし。ただ待つ。
ドイツ語三人組はずっとおしゃべりしている。
3時、エンジンがかかり車両が揺れ始める。しかし進まない。
3時10分、連結作業をしているようで車両ががシャンと揺れる。さらに何かを組み替えるような金属音がし、いざ発車かと思いきや相変わらずアイドリング。
3時15分、エンジンの回転音が上がり、いよいよと思いきやまだまだ。外ではおじさんたちの声がする。
4時3分、ついに出発。駅に着いてからもう3時間が立とうとしていた。
寝袋をかぶってウトウトしていると口調の強い声がする。目を覚まして声のする方を見ると濃い緑色の作業着を着たちょっと太めの女性が、ドイツ語三人組にどこに行くのか?何しに行くのか?と英語で聞いている。
どうやらブルガリアの国境に着いたらしい。発車して30分での再停車。
その検査官はこちらに来て同じことを聞く。それに答えてみたが、パスポートの写真と現物が一致しないようで女性は男性の係官を呼んできて、2人でパスポートと現物を品定めしている。
3分ほど頑張ってようやく解放。パスポートは持って行かれ、20分ほどするとスタンプが押され戻ってきた。
男性の係官はその間、懐中電灯を持ってベンチの下や連結部分の天井裏などを調べ回っていた。腰には小さなピストルあり。
5時17分、列車はようやく動き出す。カーブのたびにあちこちから軋む音がする。発車しても暖房がつかない。
7時ごろ外は明るくなる霧で真っ白。
8時45分、プロブディフという駅に着く。そのまま座っていたらドイツ語三人組が降り始めたので、なんでかなと思っていたらおじさんが回ってきて、片言英語でフィニッシュ、ソフィア、アナザートレインと言い出す。
慌ててかぶっていた寝袋を抱え、リュックを背負い列車を降りる。
降りてから列車に乗っていたおじさんに片言ロシア語で聞くと、ソフィアへの列車は11時らしい。確かに駅の電光掲示板に英語とロシア語で11時11分ソフィアと書かれている。
時間があるので、まちを少しみることにする。トイレに行こうにもお金がかかるので駅のインフォメーションで両替できるか聞くと駅ではできないと言って外を指差すので。そちらの方へまずは行く。
そしたら両替屋を発見。その先にバスターミナルも見えたのでそちらを確認するが、そこには両替屋がなかったなので先に見つけた両替屋で両替する。
1USD=1.685レバ。しばらく街を歩いて周り、11時前に駅に戻る。
電車に乗る前に朝食。家の周辺にあるパン屋をめぐって、パンを買って食べる。
どれもだいたい1.5レバ=100円くらい。イスタンブールと比べると半分以下。驚く。
11時15分、プロブディフ発車。予定時刻は11分だったのでほぼ時間通り。
しばらく走ると列車は霧の中をゆく。今回は暖房が入っていて快適。乗客も多い。
改札の女性車掌さんが回ってきたのでチケットを見せる。例のごとく裏側になにやら書き込んでチェック終了。
車窓からは広大な放牧地のように見える平坦な草地や時々リンゴ園らしき果樹園やトウモロコシの栽培跡が残る畑などが見える。
こうした景色を見るたびにここに暮らす人たちはどのような感覚で現代を生きているのかと考えてしまう。
メガソーラーも見える。町に入ると崩れかけた家やひどく落書きされた建物が目につく。
つづく?
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